食事でストレスを減らし、健康に!
現代社会で生きていく上で、切っても切れないのがストレス。
ストレスがどのように人の体をむしばんでいくのか。
前回の記事で、特にストレスが溜まっていないと思っている人でも無自覚にストレスを溜めてしまっていること、ストレスにより心が病むのではなく脳が物理的に委縮していくことなどをまとめました。
ストレスを解消し、体への害を少なくするために有効なストレス対策はこちら。
引き続き今回は、私たちが毎日、口にしている「食事」からストレス対策を行い、健康を目指すという内容で記事をまとめてみました。
眉唾ものの情報ではなく、医学的なエビデンスにもとづいた食事内容のみを記しています。
テレビなどで日々、さまざまな食べ物や栄養分が体に良いと言われていて、結局どれが一番いいのかわからないという方は是非読んでみてください。
信頼できるエビデンスとは
世の中にはたくさんの情報があふれており、あるテレビ番組では肉が体に良いと言い、ある本では肉は体に悪いと書いてあります。
いったい、どちらの情報を信じればよいのでしょうか。
そのようなときに指標になるのが、その研究がどのような科学的根拠(エビデンス)によって裏付けられた情報なのかということです。
少し難しい話になりますので、結果だけ知りたい方は読み飛ばしてもOKです。
そもそも科学的根拠のもとになる医学研究は、大きく分けて「ランダム化比較試験」と「観察研究」の2つにわけられます。
一般的に、ランダム化比較試験から得られた研究結果の方が、より信頼性が高い(エビデンスのレベルが高い)と言われています。
ランダム化比較試験とは、研究対象をランダムに決め、片方のグループにだけ健康に良いと思われる食品を摂取させ、もう片方のグループにはそれを摂取させずに、比較を行うという試験です。
観察研究とは、健康に良いと思われる特定の食品をすでに多く摂取しているグループを探してきて、あまり摂取していないグループと比較するという研究ですが、すでに自発的にその食品を摂取しているということは、その他の食事や運動習慣、健康意識など、他の部分においても異なっている可能性があり、ランダムに対象者を選ぶランダム化比較試験よりは信頼性に劣るとされています。
つまり、ランダム化比較試験にて検証された研究結果の方がより信頼できるというわけです。
しかし、それよりもさらに信頼できる研究方法があります。
それがメタアナリシスと呼ばれる、複数の研究結果をとりまとめた研究手法です。
1つの結果よりも複数の結果を総合判断した方がより信頼できるというわけです。
中でも「最強のエビデンス」と言われているのが「複数のランダム化比較試験をまとめたメタアナリシス」です。
もともと信頼性の高いランダム化比較試験のみをまとめて検討した結果、導き出されたエビデンスはもっとも信頼できるというわけです。
これから紹介するのは、その「最強のエビデンス」(複数のランダム化比較試験をまとめたメタアナリシス)によって証明されたストレス軽減・かつ健康に良い食べ物なのです。
肉よりも魚
肉好きの人には残念な内容ですが、肉(特に赤身の肉)は体に悪いということが、複数の研究結果から明らかになっています。
赤身の肉というと、具体的には牛肉、豚肉などの赤く見える肉のことです。
ただし、赤くない肉、すなわち鶏肉はOKとされています。
焼肉やトンカツはNG、焼き鳥はOKというわけですね。
そして、肉の代わりに摂取すべきたんぱく質として、もっとも推奨されているのが魚です。
魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が、ストレスによって損傷された脳の海馬と呼ばれる部分の神経細胞に栄養を与える活動を高めることが研究により証明されているからです。
魚は週に3回程度食べることが推奨されています。
食べても太らない炭水化物とは?
炭水化物といえば、パンやご飯を思い浮かべると思いますが、その色といえば、白ですよね。
残念ながら白い炭水化物は、急激に血糖値を上げるため糖尿病になりやすく、また、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化による病気が起こるリスクを高める可能性があることが数多くの研究から報告されているのです。
しかし、主食である炭水化物が体に悪いと言われても困ってしまいますよね。
でもご安心ください。
体に良い炭水化物というものがあるので、それと置き換えれば良いのです。
それは「茶色い炭水化物」です。
全粒粉のパンや、玄米など、精製される前の炭水化物です。
同じ穀物なのに、体に良い悪いがあるのはなぜなのでしょうか。
実は精製過程により食物繊維やビタミンがそぎ落とされてしまうからなのです。
糖質制限ダイエットが流行していますが、重要なのは炭水化物の量ではなく、どのような炭水化物を摂取するかであり、白い炭水化物は体重増加につながるものの、茶色い炭水化物を食べても体重は増えないことが研究結果から示唆されています。
日本食が健康に良いわけではない
実は日本食が体に良いというエビデンスは弱いことが明らかになっています。
塩分と炭水化物の量が多いためです。
エビデンスによりもっとも健康に良いといわれている食文化は「地中海食」なのです。
地中海食の中心となるのは「オリーブオイル」「ナッツ」「魚」「野菜」「果物」です。
2013年におこなわれたランダム化比較試験によると、地中海食を食べるよう指導を受けたグループは、そうではないグループに比べ、脳卒中や心筋梗塞になるリスクが30%程度低下、乳がんになるリスクが57%も低下することが明らかになりました。
研究によって積極的に摂取することが推奨される量は下記の通りです。
・オリーブオイル…1日大さじ4杯以上
・ナッツ…1週間に90g以上
・生の果物(加工品は不可)…1日3単位以上
※果物1単位はバナナなら1/2本、リンゴ・オレンジ・梨なら小ぶりなもの1個相当。
・野菜(加工品は不可)…1日2単位以上
※野菜1単位は葉野菜なら小皿1杯、調理された野菜なら小皿1/2杯相当。
・魚(特に脂ののったもの)、海産物…1週間に170~260g以上
・豆類…1週間に小皿3/4杯以上
これらの食品を毎日の生活に取り入れれば、地中海食のレシピを用いずとも、地中海食と同様の健康効果をあげることができます。
果物は糖尿病を予防するが、フルーツジュースは糖尿病リスクを上げる
地中海食の推奨食品としてあげられていた果物。
毎日とるのは難しそうということで、ジュースならば…と思った方も多いのではないでしょうか。
ですが、たとえ100%ジュースであっても、果汁のみを絞り出し加工した時点で不溶性の食物繊維が失われ、ほぼ果糖のみとなってしまうため、糖尿病のリスクが上がってしまうことが明らかになっています。
これは野菜ジュースでも同じことが言えます。
フルーツジュースや野菜ジュースは、果物や野菜の代わりにはならないのです。
野菜にしろ、果物にしろ、加工品ではなく、そのものをまるごと摂取する必要があるということです。
牛乳やヨーグルトは体に良いのか、悪いのか?
テレビでは、ヨーグルトは体に良いという話題がよく取り上げられています。
しかしその一方で、カロリーや脂肪分が多いという理由で避けている人もいます。
実際のところはどうなのでしょうか。
2015年に発表されたメタアナリシスによれば、乳製品のとりすぎは前立腺がんや卵巣がんのリスクがあがることが明らかになっています。
その驚きのリスクはこちら。
乳製品 | 前立腺がんのリスク |
牛乳(1日200g増えるごとに) | 3%上昇 |
低脂肪乳(1日200g増えるごとに) | 6%上昇 |
チーズ(1日50g増えるごとに) | 9%上昇 |
乳製品 | 卵巣がんのリスク |
牛乳(1日1杯増えるごとに) | 13%上昇 |
前立腺がんと卵巣がんに限って言えば、乳製品の摂取はかなりのリスクを伴うものであるとわかるでしょう。
ただし、ヨーグルトの摂取量が多い人ほど糖尿病の発生率が低くなる可能性を示唆した論文もあり、乳製品がひとえに体に悪いとは言えないということにも注意が必要です。
成長期の子どもなど、たんぱく質を摂取するという観点からいえば、乳製品を摂取するのが良いとされる考え方もあります。
しかし、乳製品の摂取量が多くなりすぎると前立腺がんや卵巣がんのリスクが高くなるということは複数の研究結果より明らかになっているため、前立腺がんや卵巣がんのリスクの高い家系の人や、大人に関しては、乳製品の摂取はほどほどにとどめておくことが望ましいと言えるでしょう。
卵は一週間に6個までにしないと糖尿病や心不全になる
以前はよく「卵は1日1個まで」といわれていましたが、最近になって「卵を食べすぎてもコレステロール値が上がるわけではないので何個食べてもよい」と言われ始めました。
では、エビデンスはどのようになっているのでしょうか。
実際、食事中のコレステロールの量と、血液中の悪玉コレステロール値の間には弱い相関しかないと明らかになったため、食事中のコレステロール量の目標値が外されたという経緯はあります。
しかしながら、これが卵をたくさん食べても大丈夫ということを意味しているわけではありません。
「食事中のコレステロール量と、血中コレステロール値の間に相関がない」ことと、「コレステロールを多く含む食事をしても健康に悪影響がない」こととは全くの別だからです。
実際、2013年のメタアナリシスによると、卵を1日1個以上食べるグループは、ほとんど食べない(1週間に1個未満)のグループに比べ、糖尿病を発症するリスクが42%も高いことが明らかになっています。
さらに、2008年の別の研究においては、卵を1日1個食べるグループは、ほとんど食べないグループに比べ、28%心不全を起こすリスクが高くなり、1日2個以上食べるグループでは64%もリスクが高くなることが明らかになっています。
同研究において、1週間に6個までなら心不全のリスクが上昇しなかったということもあり、卵はあまり食べない方がよく、食べるとしても1週間に6個以内におさめることが良いと言えるでしょう。
ちなみに、白い卵でも茶色い卵でも栄養価の面では変わりはなく、また黄身の色もニワトリが何を食べているかだけで決まるため、栄養とは関係がないとのことです。
チョコレートは体に良い?
最近、コンビニなどでもたくさんのカカオ含有量のチョコレートを見かけますが、本当に体に良いのでしょうか?
チョコレートに関してのランダム化比較試験によってわかっていることは、高血圧の人の血圧を下げる効果があるということです。
ただし、これらの研究において健康効果があるといわれているのはチョコレートに含まれるポリフェノールの一種であるフラボノールや食物繊維であり、砂糖含有量が上がれば健康への害の方が上回る可能性があります。
砂糖やバターなどの少ない、カカオ含有量の高いチョコレートを選ぶことが必要です。
βカロテンは、がんのリスクを上げる
βカロテンは、カボチャなどの緑黄色野菜に含まれる成分です。
緑黄色野菜や果物をよく食べる人に胃がんや肺がんが少ないことから、がん予防の効果を期待され、研究されていたのですが、βカロテンのサプリメントの効果を評価するランダム化比較試験から得られた結果は散々なものでした。
なんと、βカロテンのサプリメントは肺がんを予防するどころか、むしろ肺がんのリスクを上昇させることが明らかになったのです。
それだけでなく、下記に示すような恐ろしい悪影響がメタアナリシスによってわかってきました。
βカロテンのサプリメントによって起こる悪影響 | 上昇するリスク |
膀胱がん | 50% |
肺がん | 10~20% |
胃がん | 10~20% |
死亡率 | 7% |
これらの知見からわかることは、緑黄色野菜の摂取は病気のリスクを下げるものの、そこから抽出されたβカロテンという成分を摂取すると健康になるどころか、むしろ病気のリスクを上げてしまう可能性があるということです。
つまり、栄養はサプリメントなどで成分として摂取するのではなく、それを含む食品そのものを摂取することが望ましいと言えるでしょう。
ちなみに、トマトに含まれるリコピンも、体に良いというエビデンスは存在しません。
また、オーガニック食材や、グルテンフリーなども特殊な状況にある人(セリアック病など)を除けば、特に健康に良い影響をもたらすというエビデンスはありません。
テレビや広告などの情報に踊らされることのないようにしたいものですね。
まとめ
いかがだったでしょうか。
予想通りだったという人もいるでしょうし、予想外だったと思った方もいらっしゃるでしょう。
テレビなどでよく言われている、”この地方では長寿が多くて、これを食べている人が多いから体に良い”や、”100歳を超えるご長寿は肉を食べている人が多い”などの情報に惑わされるのではなく、信頼できるエビデンスにもとづいた食物を摂ることが大切です。
なお、エビデンスにもとづいた食事については、こちらの本に詳細に書いてあり、大変わかりやすかったです。
また、私がこの本を読んで意識的に食べるようになったのが、こちらです。
この1袋に、およそ魚が2.6g(乾燥状態で)、ナッツが7.8g入っていました。
ナッツと魚が同時に摂取でき、個包装になっているので小腹が空いたときなどにもってこいです。
毎日私たちが口にするもので、私たちの体は作られています。
この記事の食事を100%実践することは難しくとも、いくつかを意識して置き換えていくことでずっと健康的な食生活になると思います。
私は早速、今買ってあるお米がなくなったら玄米にする予定です。
みなさんも、健康でストレスに強い体を意識して過ごしてみてはいかがでしょうか(*'▽')
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